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鉄錆廃園

牙狼の二次創作メインサイト

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  • 2019_09

「焦燥」第3話

 「焦燥」第3話です。
 

 鋼牙のイライラゲージ、結構キテます。
 でもまあ、半分くらいは自業自得ですから;;
 
 しかし、あんな男をじっと献身的に待てるカオルは貴重だわ、ホント。




 
「焦燥」 第3話


(あれ……? 私、何してるの……?)
 カオルは鈍った頭でぼんやりと考えるが、思考が散らばってうまくまとまらない。
 とりあえず辺りをゆっくり見回すと、そこはホテルらしい豪華な部屋だった。
 大きな窓から足下に広がる美しいネオンの海。
 さっき観た映画のワンシーンによく似ている。
 映画のストーリーもろくに覚えていないくせに、主人公と恋人がデートをして二人きりで語り合う、何気ないシーンがとても羨ましくて頭に残っていた。
 ほんのひととき、短くてもいい。鋼牙と二人で、あんな風に過ごしたい--
「そう。それがあなたの望みなのですね。……なんて慎ましい人だ」
 どこかで聞いた声がしたかと思うと、ぱちんと指を鳴らす音が聞こえた。
 すると、瞬く間にカオルが身につけていた服がきらびやかなイブニングドレスに変わる。
「--さあ。こっちを見て」
 言われるままに声の方へ顔を向けると、そこにいたのはさっきのナンパ青年--ホラーだったが、カオルの歪んだ視界には誰よりも大好きな人物として映っていた。
「鋼牙……」
 カオルは華のような微笑みを浮かべて、白い腕を伸ばした。


*  *


「私と過ごす時間は無駄なんでしょ?」
 いつか聞いたことのあるセリフに、鋼牙は眉を顰めてカオルと男が消えた方を睨んだ。
(またくだらない芝居か……)
 つきあっていられない。
 呆れて嘆息し、踵を返そうとしたとき、ザルバが呼んだ。
『鋼牙』
「……なんだ?」
『さっきのカオルのセリフだが、芝居じゃないと思うぞ』
「……そうか」
 本気ならば、それはカオルにとっていいことかも知れない。
 魔戒との関わりを断ち、本来彼女のあるべき世界へ戻る。
 そうできるなら、そうするべきだと思っていたはずなのにーー
 今、自分の心を支配している、この感情はなんなのだろう?
 胸が苦しくて、痛いーー
『……それに、あの男。なんだか妙な感じだ』
「妙……?」
 ザルバの言葉に眉を顰めたとき、不意に頭上に白い光が閃いた。
『鋼牙!』
 ひらり、と舞い落ちてきたのは、白い封筒。
 手を伸ばしたとき、
『やめろ! 鋼牙! ホラーの匂いが……!』
 ザルバが叫んだが間に合わず、鋼牙の指先が封筒に触れた瞬間、視界が暗転した。



 次の瞬間、鋼牙がいたのは真っ暗な空間だった。
 壁はみえないが、肌に感じる圧迫感からして、かなり狭い空間だということはわかった。
「ザルバ。ここはなんだ?」
『結界だ。どうやらあの封筒はゲートだったようだな』
「そう。その通り」
 ザルバの声に答えるように、先程聞いたばかりの声が頭上から響く。
「ようこそ、魔戒騎士。私からの招待状、受け取っていただけて嬉しいですよ」
「貴様……! ホラーだったのか! カオルはどこだ!?」
「彼女なら、あなたのすぐ傍にいますよ。ーーほら」
 声色に嘲笑う気配が含まれ、突如として目の前の視界が開ける。
 四角く切り取られた窓のような向こうに見えたのは、肩や胸元も露わな紺色のイブニングドレスに身を包んだカオルの姿だった。
「カオル!」
 思わず名を叫んだが、向こうには届かない。
「彼女の望みはささやかで慎ましい。ほんの短い時間でもいい。大切な人と過ごすこと……。叶えることなど容易い」
 カオルはぼんやりと濁った虚ろな瞳で傍らの青年を見つめると、あでやかに微笑んだ。そして、白い腕を青年に伸ばして絡める。
「…………ッ」
 刹那、心臓を切り裂かれるような痛みを感じて、鋼牙はとっさに胸を押さえた。
『落ち着け、鋼牙。カオルはなんだかおかしい』
 ザルバの言葉は、半分も聞こえていない。ただ、自分の心臓がどくどくと早鐘を打つ音が頭に谺する。
 どろり、とどす黒いヘドロのような感情があふれてくるのがわかる。
 その感情に突き動かされるままに、鋼牙は無言で剣を抜き放った。
「おっと。物騒ですねぇ。私は彼女に優しい夢を与えているだけですよ。夢に満たされ、とろけた女性の魂と肉体は、私にとって甘いスイーツ。でも、もうひとつ好物があるんてすよ。わかりますか?」
 鋼牙は答えない。
 声はくすくすと笑いながら言葉を継いだ。
「今のあなたのように、嫉妬に狂った男の魂と肉体は苦味の強いブラックコーヒーのようなもの。二つセットで頂くとより美味しいんですよ。……魔戒騎士とその恋人は、どんな美味なんでしょうね。楽しみです」
「誰が貴様などに……!」
 すう、と剣先を空間の窓に向けると、気合いとともに結界を切り裂いた。
 ガシャン、と硝子が割れるような音とともに結界が消滅すると、鋼牙の身体はカオルと青年がいる室内に放り出される。
 柔らかな絨毯の上に音もなく着地すると、鋼牙は青年に剣先を向けた。
「カオル!」
 名を呼んでも、彼女は答えない。
 ぼんやりと濁った瞳で、真っ直ぐに青年だけを見つめている。見ようによっては陶然としている表情が、きりりと胸を締めつけた。
「乱暴な登場ですねぇ。ーーほら、あなたを呼んでいますよ?」
 青年に促されて、ようやくカオルがのろのろとこちらに顔を向ける。しかし、小さく首を傾げると、
「あなた、誰?」
 と問いかけた。
 意識を操られているせいだと理解していても、その言葉は更に鋼牙の胸を抉る。
「カオルを解放しろ。--カオルは、俺のものだ」
 無意識に口にしたその言葉が、ストンと胸に落ちる。
 そう。理性がごちゃごちゃと何を言い募ろうと、自分の心の奥深くではとっくに決めていた。
「我々を狩ることばかり優先で、小さな望みひとつ叶えてあげられないあなたが、そんなことを言える立場なのですか? 私の与える夢を見ている方が、彼女は幸せそうですが?」
 ホラーの台詞に言い返せる言葉が見つからず、苛立ちが募る。
 確かにどこまでも指令優先で自己中心的な自分は、カオルの望みさえ推し量ってやれなかった。恋人として、失望されても仕方がないのだろう。
 それでも他の誰にも、当然ホラーになど、カオルを渡すつもりはない。
『鋼牙。ネックレスだ。そいつが発する邪気がカオルを操っている』
「承知」
 鋼牙はカオルの首もとで妖しい光を放つネックレスを睨みつけると、躊躇うことなく剣を振るった。
 軽い金属音とともに、切り落とされたネックレスが床に落ちる。金属かと思われたそれは金色の小さな蛇となってのたうちながら消えた。無論、カオルの白い肌には傷ひとつない。
「ほお。すごい腕だ」
 淡々とした感嘆の声をあげる青年の身体から、カオルの腕が滑り落ちる。ぼんやりしていた瞳に次第に光が戻り、きょとんとして辺りを見回す。
「ここ、どこ……? 鋼牙?」
 険しい顔つきで剣を抜いている鋼牙の視線は、自分の隣にいる青年に向けられている。
「カオル! そいつから離れろ!」
「え?」
 意味を理解する暇もなく、強い力で腰を引き寄せられる。優雅な物腰からは想像もできない強い力で腰を拘束され、首もとに手が伸びてくる。息が詰まりそうなほど喉を圧迫されて、カオルは掠れた声を洩らした。
「こ……が……っ」
「よせ!」
 カオルの身体に巻きついた腕がずるりと動きだし、鱗が浮き出して蛇に変わる。巨大な蛇が獲物を捕らえたときのように、ギリギリとカオルを絞め上げる。
「やめろ!」
 鋼牙の剣が蛇を切り裂く。
 解放されたカオルはぐらりと傾いで前に倒れ込む。それを受け止めて、鋼牙は青年と間合いをとった。 
 酸欠で意識を失ったカオルの呼吸を確認し、後ろのソファーに下ろすと、前方に向き直る。
「どうして彼女を夢から覚ましてしまったんですか? 幸せなまま死ねたのに」
『意識を勝手に操ってか? そんなものはまやかしだ』
 吐き捨てるようなザルバの言葉に、ホラーはくっと喉を鳴らした。
「まやかしでも、人間は満たされる」
 にこり、と優雅に微笑んだ青年の全身が青緑色に染まり、下肢が巨大な蛇に変わる。腕から生えた蛇の頭部が大きく口を開いて、唾液を垂らしながら鋼牙を威嚇した。
『鋼牙。気をつけろ。あれは毒だ』
「承知」
 本性を現したホラーを油断なく睨みながら、鋼牙はゲートを開いて鎧を召還する。
「やれやれ。魔戒騎士とはどこまでも無粋な輩だ」
 呆れたような言葉とともに、蛇が襲いかかってくる。
 口を開いて噛みつこうとするそれを切り伏せ、そのまま本体に肉迫しようとしたが、蛇の尾に足を絡めとられてしまう。
「く……っ」
 そのままずるずると全身に巻きつかれ、鋼牙は息を詰めた。その目の前に、蛇がしゅるりと頭をもたげる。牙からあふれる唾液が床に落ちて、じゅわりと煙をあげた。
『鋼牙!』
「はああぁッ!」  
 気合いとともに剣をホラーの表皮に押し込み、そのまま下へ切り下げる。
 尾と胴を切り落とされたホラーは床に崩れ落ちてのたうち回った。
「おのれ! 魔戒騎士!」
 最後の抵抗とばかりにホラーが大きく口を開く。そして、大量の毒液をカオルに向かって吐き出した。
「させるか!」
 当然のように立ちふさがった鋼牙の鎧から、緑色の魔導火が吹き出して毒液を阻む。じゅわり、と一瞬のうちに毒液を浄化すると、そのまま魔導火を纏わせた剣でホラーの首を切り落とした。
 悲鳴すら上げることもできずに倒れたホラーは、どろりと溶けて消えた。
 その消滅を見届け、鎧を解いて現れた鋼牙の表情は、限りなく険しい。
 無事にホラーを封印し、カオルを助けた安堵も何もなく、憮然とした面持ちで細い身体を抱き上げる。
 その胸には、未だ収まらない黒い嵐が吹き荒れていた……。


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まとめ【「焦燥」第3話】

  1. 2012/11/24(土) 21:12:41 |
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