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鉄錆廃園

牙狼の二次創作メインサイト

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「輪廻巡る赤い糸」第5話

 「輪廻巡る赤い糸」の第5話でゴザイマス~~~。

 はあ~。これも丸々消えてしまって途方に暮れておりましたが、やっと復旧です~。
 


 
「輪廻巡る赤い糸」 第5話


「……馨殿はとある厄介なホラーに狙われている」
「…………」
『……それはそれは』
 この時代でもホラーに付け狙われているとは。
 鋼牙が思わず言葉を失ってしまったのも無理はない。ザルバでさえ、それ以上何も言えずにカチリと口をつぐんでしまった。
「この都ではしばらく前からおぞましい事件が続いていた」
「事件?」
「……通りに面した壁に血塗れの衣だけが吊るされ、その中身の人間は喰われて消えている。明らかにホラーの仕業だった」
「神出鬼没で狡猾。邪気をほとんど洩らさねーから居場所を突き止めるのも難しい。これまでに十五人殺られた。だから、都の連中は怖がって近頃は滅多に夜歩きしない」
 毎夜のように様々な女の元へと通う貴族達ですら、その鳴りを潜めている。
 ――だが
「見ての通り、馨殿は普通の姫ではない。男の服を着て、真夜中でも平気で出歩く方なのだ」
「? ……どういう意味だ?」
 鋼牙の目から見れば、普通のか弱い女そのものでしかないのだが。
 いまいち理解していない様子を見てとって、ザルバが助け船を出した。
『鋼牙。この時代の身分ある女はこんな服は着ないし、好き勝手にホイホイ出歩いたりしない』
「……そうなのか」
 普通ではない、とはっきりきっぱり言い切られた馨は不服そうな顔をしたが、言い返すことはしなかった。自分に非があると一応はわかっているらしい。
「……あの時は……自分でも愚かだったと思っています……。でも! あんなことになるなんて私には……っ」
「わかってるって。馨姫はキレイな絵が描きたかっただけさ」
 馨を元気づけるように御影がポンポンと肩を叩く。
「……絵を、描くのか」
「……はい」
 僅かに固い鋼牙の声色には気づかず、深く項垂れた馨は、力なく頷いた。


*  *


 その夜はとても月が美しかった。
 いつもと何か空気が違う気がしていたのは、今から思えばすべての予兆であったのかも知れない。
 そんなことも知らず、その日の馨は朧にけぶる月の美しさに胸をときめかせていた。
 都の不穏な事件のことは知っていた。
 馨の夜歩きをやめさせようと父は何度も言って聞かせたのだ。
 物の怪は確かに恐ろしい。
 しかし、出会うとは限らない。
 そんな安易な気持ちが先走った馨は、お供の小舎人童・浅黄だけを伴って屋敷を抜け出したのだ。
 あの美しい月と応天門が描きたかった。
 いつものように水干に着替え、髪を高く結い上げた馨は浅黄と同じ少年にしか見えない。二人は人影ひとつない大路を応天門へ向かっててくてくと歩いた。
「か、馨様っ。やはり戻りましょうっ」
 怖くてたまらない浅黄はそう言って何度も馨の袖を引いたが、彼女の歩みは止まらない。結局そのまま応天門まで辿り着いてしまった。
「わあ!」
 淡い月明かりに浮かび上がるように佇む応天門の姿に心奪われた馨は早速持ってきた紙を広げると筆でさらさらと絵を描きはじめた。
「姫様!」
 浅黄にとっては真夜中の応天門など、恐怖の対象でしかない。物陰やそこらの木陰から、いつ物の怪が現れるかと思うと生きた心地もしなかった。
「帰りましょう、姫様!」
「いやよ。帰りたいなら一人でお帰りなさい」
 その言葉通りにできたのなら、どんなに楽なことか。
 しかし、使用人という立場である以上、この場に馨ひとり残して帰ることなど浅黄にはできない。残していって万が一のことでもあったりしたなら、それこそ浅黄の命もないのだから。
 時折遠くで嘲るように鳴く鳥の声にびくびくしながら、仕方なく馨の気が済むまで待っていた時だった。
 ざくり、と土を踏む足音が不意に聞こえてきたのは。
「おやおや。真夜中に童二人とは。どこぞの公達のお使いかな?」
 ねっとりとした、絡みつくような声色にぞわりと背筋を撫でられて、反射的に馨がふりむくと、そこにいたのは黒い直衣姿の男だった。異様に白い肌と血に濡れたような真っ赤な唇が何故かとても不吉に感じられる。
 物の怪かと一瞬身体を強ばらせた浅黄は、相手が人間とわかるとほっと肩の力を抜くと同時に馨を庇うように前に立った。馨が女だと知れたなら、何をされるかわかったものではないからだ。
「可愛い童じゃ。今宵の贄に相応しい……」
「え……?」
 その言葉の意味を聞き返す時間は、浅黄にはなかった。刹那、腹部に強い衝撃を感じたかと思うと、身体が自分の意志を離れて舞い上がり、土壁に叩きつけられる。
「か、馨様……っ」
「浅黄!」
 藻掻く浅黄の身体は不自然に伸びた男の指先によって土壁に縫い止められた。そして、ずるずると何かを啜るような音を立てて内側からしぼんでゆく。後に残ったのは血塗れの水干だけ……。
「浅黄……っ」
 物の怪だ。
 しかも、近頃都を騒がせている物の怪だと悟った時には、不気味な男の笑みが目の前まで近づいていた。
「ひ……っ」
「……おや? もしや、そなた……女か?」
 男の血塗れの手で触れられそうになり、馨は息を詰めて一歩後ろへ飛び退く。しかし、足が縺れてかくんと倒れてしまう。
「うん。この甘く芳しい香りは確かに女じゃ。……ほほ。男のなりをしておるとは。面白き女じゃ」
 ――さぞや美味であろう。
 続いた一言に馨は己の運命がここで閉ざされてしまうことを確信した。
 ゆらり、と持ち上がった男の手に、自然に目が吸い寄せられる。骨ばった血塗れの指先がしゅるりと伸びて、鋭い刺のように変化した様子を見て、あれが浅黄の命を奪ったのだとわかった。 
 その指がしゅるしゅると伸びながら自分に近づいてくる。
 逃げたい。
 けれど、足が動かない。
「可愛い蝶々。綺麗な羽を縫い止めてあげよう」
 馨はどうすることもできず、ぎゅっと目を伏せて来るべき瞬間を覚悟した。
 ――しかし
 ぎん、と金属が噛み合うような硬質な音がして、強い風がすぐそばを駆け抜けた。
「え……?」
 驚いて目を開けると、男の姿をした物の怪は何故か土壁の前に崩れ落ちて呻いているではないか。 
「逃げよ」
 低く、強い声にハッとして顔を上げると、馨を庇うように高い影が前に出る。まず目に飛び込んできたのは真っ白な狩衣姿。黒く長い髪をひとつにして背で束ねた様子は陰陽師かとも思ったが、彼が手にしていたのは赤い鞘の太刀であった。
「逃げよと言っている」
 少し苛立ちを含んだ声色に馨は慌てて立ち上がろうとしたが、腰が抜けてしまったのか、足が動かない。
「あ、足が……っ」
『凰牙。お姫様は動けないようだよ。少し離れて戦わないと』 
「……わかっている」
 他には誰もいないはずなのに、突然近くから聞こえてきた女の声に答えた面倒そうな憮然とした声色とは裏腹に、青年は更に前に踏み出して馨から距離を取った。
「ぐ、が……。貴様、何者か!?」
 よろよろと立ち上がった男を見て、馨が声にならない悲鳴を上げる。 
 黒い直衣を切り裂かれた男の腕と首が、普通ではあり得ない方向に曲がっていたからだ。
「……私は魔戒騎士。貴様らを闇に還す者だ」
「……魔戒騎士……」
 ゴキン、と嫌な音がして、男の首が元の位置に戻る。腕もゴキゴキと異様な音を響かせながら表皮がぐねぐねとのたうつと真っ直ぐに戻った。
「それは私の贄だ。返してもらおうか」
「……素直に渡すと思うか?」
「ならば、己の手足が散らばった血の海を眺めて後悔するがよい」
 男が腕を振り上げると、それは一瞬のうちに人のものから青い表皮へと変わる。そして、その変化はそのまま全身へと及び、男は大きな鈎爪と突き出た鼻先を持つ、蜥蜴に似た姿の異形へと変化した。
『おお。いやだ。醜いね』
 不可思議な、嫌悪に満ちた女の声には答えず、青年は手にした剣を頭上へと振り上げた。そして、その切っ先で闇夜の空に光の円を描く。
「あ……っ」
 刹那、眩しい光が溢れて馨の目が眩む。とっさに片手で目を覆い隠し、少しして恐る恐る手をどけると、そこにいたのは神々しいまでに輝く金色の鎧だった。
 狼を模したその姿に、馨は恐怖すら忘れて見入った。
「……きれい……」
「……ほお。黄金騎士か。面白い」 
 ――刹那、異形の姿が青年と馨の視界からかき消える。
『愚かしい』
 侮蔑に満ちた女の声。
 そして、青年が何もないはずの左側に顔を向けて剣を突き出した。
 ギィン、と金属を弾く音とともに現れた異形の男は、己の爪が易々と阻まれたことに軽く舌打ちをしながら、大きく飛びずさった。
 ――しかし、その動きを的確に予測した青年の動きは素早かった。ほとんど同じタイミングで地面を蹴って飛び出し、異形の男が着地すると同時にその腹部に深々と剣を突き立てる。
「ぐおああああ!」
 全身の肌が粟立つようなおぞましい叫び声を上げてのたうつ物の怪の腕が青年の肩に当たった。
「!」
 不意の衝撃を食らってとっさに後方へ飛び退くと、物の怪も更に間合いを取るように塀の上へ飛び上がった。
「……魔戒騎士……。口惜しいが今宵は引こう。だが、我が可愛い蝶は諦めぬぞ。覚えておれ」
 腹部の突き傷から真っ赤な血を溢れさせながら、異形の身体がふわりと舞い上がる。
「待て!」
 何もない場所を切り裂くように振るった剣から、目には見えない風の刃が生まれて物の怪に迫る。
 しかし、物の怪はその刃が身に届く前に闇に溶けて消えた。


 ――これが、凰牙と馨の出会いであった。


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  1. 牙狼・鋼カオ
  2. / トラックバック:0
  3. / コメント:2
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  1. 2015/11/12(木) 19:54:00 |
  2. |
  3. [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

  1. 2015/11/15(日) 21:44:52 |
  2. URL |
  3. とらこ
  4. [ 編集 ]
こんばんわ、まー母さん様。
御推察の通り、馨姫=カオルでございます~。
あの一見お貴族ホラーもまあ、なんとなく関わりはあるのですが……。まだそこはナイショです(*^_^*)
先週は色々ありまして創作にも集中できなかったので、これから気合いを入れてがんばります!!


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プロフィール

とらこ

Author:とらこ
ど田舎在住の超インドア人間。
牙狼とV系の音楽をこよなく愛してます。

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